0025.髪を切る話
子どものころはスポーツガリというボウズにヒサシのついたような髪形をしていた。物心ついたときにはそういうことになっていた。
そのころは、祖父母の家の近くの床屋に通っていた。夫婦ともが理容師で、なんというのか理容師が着る白衣のような、あの服を着ていた。店の奥は座敷で、食事をしているところにいき合わせると、気まずい気分になった。
中学くらいになると、うちの近所で切るようになる。学校のだれそれの親がやっている、というような店だった。さいしょ、めずらしく兄といった。兄弟だというと、「似てないね」と驚かれたのをふしぎにおぼえている。
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ひさしぶりに水族館いったんや。女の人ふたり連れや。歳は30がらみやろ。アザラシや。アザラシがのたーっと寝そべっとるんや。それ見てな、ええなあ、寝ころんでるだけでかわいいって言ってもらえて、っちゅうてたんが耳に入ったんや。忘れられんな。