0027.天満橋
朝、目が覚めるたびに歳をとったとおもうときがある。
京阪がもっともうつくしいのは、天満橋を出てゆっくりカーブを描きながら地上へ出たところに大川が見えるときだ。
子どものころ、梅田は遠い都会で百貨店といえば松坂屋だった。川に面しているだけがとりえのような、こぢんまりと、少々くたびれた感じだった。
そのティールームは、近所の喫茶店とはまるでちがう、きらきらとしたもので満ちていた。
OMMビル。隣に住んでいた老夫婦から、なにやらの招待状をもらって、クローズドな販売会に行くのが母の恒例だった。家族分の服を買っていたらしい。連れられて行っておぼえているのは、なぜか少し上から俯瞰した商品と人だ。
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この筆はちょっとええんや。京都の天神さんで、市で買うてきた。じいさんが、水ふくまして試し書きしよった。半紙に横線をすーっ、すーっと。
売ってるんは無口な男やったがな、奈良のほうで自分で筆をつくってるとか、そんな話をじいさんとしてた。もうちょっと、太い筆も欲しいな。