0003.ショウガ天
土ショウガをアルミのおろしがねでごしごしやっていると、なんとなく夏らしい気分になってくる。冬でもつかうが、やはり夏が気分だ。
ショウガの天ぷらを食べると、学校を半日で帰る土曜日の昼ごはんをおもいだす。いまならウスターソースで食べたいが、その頃はショウユかあるいはとんかつソースだったかもしれない。
商店街の天ぷらやには、ほかにもいろいろ売っていたはずだが、なつかしいのはショウガと、もうひとつは親指ほどのつつましいウインナーとウズラを串にさして揚げたものだ。ずいぶん手間なことだとおもう。
冷めた天ぷらのほのかに甘い衣をかみしめると、ゆっくり油がしみだしてあとからショウガのつんとした辛さが追いかけてくる。だれが考えたのか。ふしぎなたべものだ。