36. 梅のはなし
雨の多い冬だった。
やまない雨はない、というのはよく聞く。だから、安心しなさい、そういうことなのだろう。
しかし、雨がそのうち止むことくらいはわかっていて、それでもいま降っている雨がつらく、苦しいのだ。
むりやりに前を向かせることが、なぐさめではない。
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梅を見てきたんや。お城にな。毎年いってると、なんやそわそわしてな。梅は種類が多いから、見ごろがながい。
みんな上等のカメラもってたで。上等のカメラ持ったら、きれいなもん写したなるんやろな。道具が使う人の行動をある程度まで規定してしまうというのは、あることや。
あんな大きいカメラ、荷物でかなわんな。ちょっとよりみちもできん。写真もええやろが、自分の目で見るほうが好きや。