0014.アコ
何年か前、お盆に思い立って福山をまわって愛媛にいった。
とちゅう、島の食堂で食べた煮魚をいまでもときどきおもいだす。
引き戸を引くと、テレビでは高校野球がやっている。ばあさんが二人とじいさんひとりが店の人らしい。
煮魚定食を注文すると、今日はアコだけどいいか、という確認があった。アコがどんな魚か知らないがまあいい。
ばあさんのひとりが鍋を火にかけ煮魚をやりはじめた。もうひとりのばあさんが、つくりおきの副菜やミソ汁の手配をする。
じいさんは、はじめにお茶を出したきり、あとは高校野球を見ていた。
アコは上品な味の白身魚だった。ナスビの煮たのとマカロニサラダもことのほかうまかった。そういう取り合わせもよかった。
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盆になるとな。ふん。かならずふだん見かけん虫がうちに入ってくるのよ。ほう。なんかそういうのは、あるんかなあっちゅう気はするな。へえー。