0029.新印象派展

 順調にはたらく胃腸を伴った人生というのは、どういうものだろうか。

 ビルの十何階かにある美術館にいってきた。
 高いところが怖いのに、うっかり展望エレベーターの窓側に立ってしまった。内側に戻るのもなんなので、目をそらしてしのんだ。1分もかからない。
 ビルはさらに上に伸びて、展望台へのエレベーターには行列ができている。真冬の陰な雨というのに。

 新印象派、と聞いてもすぐに名前が浮かばない。19世紀の後半、印象派を引き継いで、理論的に手法化したものとしておこう。
 パレットで絵の具を混ぜるのでなく、カンバスに色を置いて、置き方の妙で像をむすぶ。そこに時代らしく科学の知見が生かされている。
 やりかたはCGに似ている。じっさい手書きのCGのように見える。技術的な理論に基づく一派なので、どれも似た印象になりがちだ。しかたない。

 絵の横に解説のある絵もある。つい読んでしまう。
「疲れきった顔で」とある絵の解説に書いてあった。
 その顔が疲れているのか、そうでもないのかは、見る人が決めることであって、解説してもらうことではない。
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 シュヴルールという学者の色彩研究の影響が大きかったということで、展示もあった。著書の色彩チャートのようなページと、彼の100歳の折のインタビューの写真だ。
 けっきょくそんなことをいちばんおぼえている。

 

0028.天満橋発    0030.ドライス